この記事でわかること
- FXの「稼げている人の割合」が、なぜ一つの数字で言えないのか
- 公表されている統計の種類と、それぞれの見方
- 統計を読むときに注意したい点(生存者バイアスなど)
- 割合よりも、自分の取引で確認したい数字
結論から言うと、「FXで稼げている人は何%」という一つの数字は、集計の対象・期間・方法によって大きく変わるため、単純に信じるのは危険です。この記事では、特定の割合を断定するのではなく、公表されている統計の見方と、注意点を整理します。
なぜ、一つの数字で言えないのか
「FXで勝っている人の割合」を調べると、調査によって、大きく異なる数字が出てきます。理由は、次のような違いがあるためです。
| 違い | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 取引を続けている人だけか、辞めた人も含むか。全口座か、一部の口座か |
| 期間 | 1か月か、1年か、数年か |
| 損益の定義 | 決済した損益か、含み損益も含むか。入出金をどう扱うか |
| 集計の方法 | 会社の公表データか、アンケートか |
こうした条件が異なるため、調査どうしを、単純に比較することはできません。数字を見るときは、「誰を、いつ、どう数えたか」を、確認することが大切です。
公表されている統計の種類
1. 金融先物取引業協会の統計
金融先物取引業協会は、会員業者の店頭FXについて、顧客の預託金に関する統計を公表しています(2015年度から)。預託額は月次、預託金が増えた口座と減った口座の割合は、四半期ごとに公表されています。
協会の解説には、次のような注意点が書かれています。
- 預託金の増減は、実現損益・評価損益の増減・スワップポイントの損益を合計したもので、業者の損益そのものではない
- 業者間で、減少した口座の割合が増加した口座の割合を上回っていても、その業者が利益を得ているとは限らない
- 統計は過去の状況を示すもので、今後の投資成果を示すものではない
2. 各社が公表するデータ
会社によっては、自社の顧客の取引データを、集計して公表しています。たとえば、OANDA証券は、口座の資産評価額の増減率を分析し、損失を出した口座の割合のほうが大きいことを、記事で示しています(具体的な割合は、記事では示されていません)。ただし、対象は、その会社の口座に限られ、集計の範囲も、会社ごとに異なります。
3. アンケート調査
投資家へのアンケートで、利益や損失を答えてもらう調査もあります。この方法では、回答した人の偏り(取引を続けている人が多い、など)によって、結果が変わる場合があります。
統計を読むときの落とし穴
- 生存者バイアス:損失などで取引をやめた人が、集計に含まれないと、残っている人だけの成績になり、実態より良く見えることがあります
- 入出金の扱い:入金や出金を除かないと、損益が正しく見えません
- 期間の違い:短い期間の成績は、運の影響を、受けやすくなります
- 割合と金額は、別のもの:勝っている人が多くても、負けた人の金額が大きければ、全体では、損失になることがあります
最後の「割合と金額は別」について、仮の例で確認してみましょう。
| 口座数 | 1口座あたりの損益(仮) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 利益が出た口座 | 60口座 | +2万円 | +120万円 |
| 損失が出た口座 | 40口座 | −5万円 | −200万円 |
| 全体 | 100口座 | — | −80万円 |
この例では、6割の口座が利益を出していますが、損失の金額が大きいため、全体の合計は、マイナスです。「勝っている人が多い」という事実だけでは、全体の収益は分かりません。
割合よりも、自分の取引で確認したい数字
他人の割合を気にするより、自分の取引を数字で確認するほうが、改善に役立ちます。次の数字を、記録から出してみましょう。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 勝率 | 利益が出た取引の割合 |
| 平均利益・平均損失 | 勝ったときと、負けたときの、平均の金額 |
| 損益比 | 平均利益 ÷ 平均損失 |
| 期待値 | 1回の取引あたりの、平均の損益 |
| 最大の連敗数・最大の資金の減少幅 | 耐えられる範囲かを、確認する目安 |
初心者が、データを見るときの考え方
- 「多くの人が負けている」からと、必要以上に怖がらない。一方で、「多くの人が勝っている」と、安易に考えない
- 数字の出どころと、条件を確認する
- 自分のルールと資金管理を、優先する
- 損失が出る前提で、損失の上限を決める
初心者が抱きやすい不安とその考え方
「結局、稼げる人は少ないのですか?」
公表されている統計や、調査の方法によって、結果は異なります。ただ、FXは、元本が保証されず、損失が出る可能性がある取引です。「稼げる」ことを前提にせず、損失を抑える備えをしたうえで、経験を積む姿勢が、現実的です。
「勝っている人は、何が違うのですか?」
個々の人の取引は、外から見えないため、はっきりとは言えません。一般には、ルールを守ること、損失を小さく抑えること、記録をつけて見直すことなどが、重要だと言われます。
関連記事:「損切りできない心理と、ルールで対処する方法」
預託金の「増減口座割合」の見方
金融先物取引業協会の統計にある「増減口座の割合」は、四半期の間に、預託金が実質的に減った口座と、増えた口座の割合です。協会の解説によると、入金や出金の影響を除いて、計算されます。
預託金の実質的な増減 = 当四半期末の金額 − 前四半期末の金額 − 期中の入金額 + 期中の出金額
たとえば、100口座(実質的に増減があった口座)のうち、55口座が減少し、45口座が増加した場合の見方は、次のとおりです(仮の数字です)。
| 項目 | 数字(仮) |
|---|---|
| 減少した口座 | 55口座(55%) |
| 増加した口座 | 45口座(45%) |
この数字から分かるのは、「減った口座のほうが、増えた口座より多い」ことです。ただし、協会の解説にあるとおり、この割合だけで、業者や個人の損益を判断することはできません。
「稼ぐ」の定義を、決めておく
「稼げている」という言葉は、人によって意味が異なります。自分にとっての、目標を決めておくと、他人の数字に振り回されにくくなります。
| 目標の種類 | 例 |
|---|---|
| 収益の目標 | 1年間で、資金の◯%を増やす(無理のない範囲で設定) |
| 資金を守る目標 | 1年間の、最大の資金の減少を、◯%以内に抑える |
| 経験の目標 | ルールを守った取引を、◯回積み重ねる |
初心者のうちは、収益の目標より、「資金を守る」「ルールを守る」という目標のほうが、続けやすいと言われます。
統計を見て、初心者が取るべき行動
- 統計の数字に、不安になりすぎず、条件を確認する
- 自分の取引は、ルールと記録で管理する
- 1回の損失を、小さく抑えて、長く続ける
- SNSの成功談は、そのまま、受け取らない
数字は、判断の材料の一つです。最終的には、自分の資金と、ルールにもとづいて、行動することが大切です。
関連記事:「FXで失敗しやすい初心者の行動パターン7選と、対策」
記録から、自分の成績を確認する例
他人の割合を気にするより、自分の記録から、成績を計算してみましょう。30回の取引の結果を例に、計算の流れを示します(仮の数字です)。
| 項目 | 数字(仮) | 計算 |
|---|---|---|
| 勝ちの回数・合計 | 14回、+42,000円 | 平均利益 3,000円 |
| 負けの回数・合計 | 16回、−32,000円 | 平均損失 2,000円 |
| 勝率 | 約46.7% | 14 ÷ 30 |
| 合計の損益 | +10,000円 | 42,000 − 32,000 |
| 1回あたりの期待値 | 約+333円 | 10,000 ÷ 30 |
この例では、勝率が5割に届いていなくても、平均利益が平均損失より大きいため、全体ではプラスです。こうした数字を、自分の記録から出すことで、「割合」ではなく、「自分の実態」を、確認できます。
数字や成績の情報を、見分けるポイント
- 出典が、明記されているか:誰が、どの期間に、何を集計したのかが分かるか
- 損失も、含まれているか:成功した結果だけが、示されていないか
- 条件が、書かれているか:取引の数量や、期間、資金の条件などです
- 勧誘と、セットになっていないか:高額な教材や、サービスの勧誘に、つながっていないか
これらに、当てはまらない情報は、慎重に受け止めましょう。
よくある質問
Q. SNSで見る「勝っている」という投稿は、信じてよいですか?
A. 投稿されるのは、成功した結果に偏りやすい、とされています。損失が出た結果は、投稿されにくいためです。数字や画像は、証拠として不十分な場合もあるため、鵜呑みにしないようにしましょう。
Q. 統計は、どこで見られますか?
A. 金融先物取引業協会の公式サイトなどで、店頭FXに関する統計が公表されています。各社のサイトにも、データが掲載されている場合があります。
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まとめ
- 「稼げている人の割合」は、対象・期間・方法によって、大きく変わる。一つの数字で言えない
- 金融先物取引業協会の統計は、預託金の増減であり、損益そのものではない
- 生存者バイアス、入出金の扱い、期間、割合と金額の違いに、注意する
- 他人の割合より、自分の勝率・損益比・期待値を、記録から確認する
FX(外国為替証拠金取引)は元本や利益が保証されたものではなく、レバレッジ効果により投資元本を上回る損失が生じるリスクがあります。この記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘や助言を目的としたものではありません。
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